実家を親族に貸すときの家賃と税金|無償(使用貸借)と賃貸借の違いを大家が整理しました

家の模型と鍵。実家を親族に貸すときの家賃と税金のイメージ 貸す
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⚠️ 【免責事項・はじめにお読みください】
この記事は、わたし自身が築45年の実家を賃貸に出した体験と、国税庁など一般に公開されている情報をもとに書いたものです。税理士・公認会計士などの資格は持っておらず、専門家によるアドバイスではありません。とくに親族間の貸し借りは「使用貸借か賃貸借か」「家賃が適正か」の判断が個別の事情によって大きく変わる分野です。実際の取り扱いは、必ず税理士などの専門家、またはお住まいの地域を管轄する税務署にご確認ください。本記事の情報をもとに生じた不利益・損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。

📅 2026年7月現在の情報をもとに作成しています。税制は改正されることがあります。最新の情報は国税庁の公式サイトでご確認ください。

「実家、弟に住んでもらうことにしたんだけど、家賃っていくら取ればいいの?」
「子供に貸すならタダでいいよね。でも税金って何かかかるのかな…」

親族に貸す話は、他人に貸すより気楽に見えて、実はモヤモヤが多いものです。家賃をいくらにするのか、タダでいいのか、あとで相続のときにモメないか。調べはじめると、税理士さんのサイトには専門的な説明が並んでいるけれど、「で、大家としては何をどう決めればいいの?」という部分がなかなか出てきません。

先に結論をお伝えします。分かれ道は「家賃をもらうかどうか」だけです。タダで貸す(使用貸借)と、家賃をもらって貸す(賃貸借)では、税金も権利関係もまるごと別物になります。

📋 この記事を読むとわかること

  • タダで貸す(使用貸借)と家賃をもらう賃貸借の違いが一覧でわかる
  • タダで貸すと贈与税は出にくい代わりに「何を失うのか」
  • 親族に貸すときの家賃をどう考えればいいか
  • 同居か別世帯かで税金の扱いが変わるという落とし穴
  • 税金より先に困る、身内相手だからこその実務トラブル
  • 大家であるわたし自身が、なぜ基本的には身内に貸さないのか

結論:まずは表で全体像

以下はあくまで一般的な整理です。実際には契約の実態で判断されますので、ご自身のケースは専門家に確認してください。

タダで貸す(使用貸借)家賃をもらう(賃貸借)
根拠民法593条民法601条・借地借家法
贈与税通常はすぐに課税されるものではないと説明されることが多い相場との差が大きいと論点になりうる
家賃収入の申告収入がないので不要不動産所得として確定申告が必要になる場合がある
固定資産税・減価償却の経費計上できない実態によっては可能
相続税の評価減(貸家・貸家建付地)期待できない可能性がある
借主が亡くなったとき契約は終了する(民法597条3項)借りる権利は相続人に引き継がれる
出ていってもらいたいとき比較的動きやすい正当事由が必要(借地借家法28条)

先に立場を明かしておくと、わたし自身は基本的に身内には貸しません。理由は記事の後半に書きます。

タダで貸す「使用貸借」とはどういう契約か

民法593条は、使用貸借を「無償で使わせて、終わったら返してもらう契約」と定めています。親が子に、あるいは兄が弟に「空いてるから住んでいいよ」と言うのは、たいていこれにあたります。ポイントは3つです。

① 借主が亡くなると、契約はそこで終わる

民法597条3項は「使用貸借は、借主の死亡によって終了する」と定めています。賃貸借なら借りる権利は相続人に引き継がれますが、使用貸借は引き継がれません。

② 期間も目的も決めていなければ、貸主はいつでも解除できる

民法598条2項では、期間も使用の目的も定めなかったときは、貸主はいつでも契約を解除できるとされています。裏を返せば、借りている側の立場はとても不安定だということです。

③ 借地借家法の保護が及ばない

借地借家法は「建物の賃貸借」について特別な定めを置く法律です(同法1条)。家賃をもらう契約では、更新を断るのに正当事由が必要とされています(同法28条)。タダで貸している場合は、この強い保護の外にあります。

つまりタダで貸すことは、貸す側にとっては出口を作りやすく、住む側にとっては足元が不安定な選択です。優しさで選んだつもりが、相手の立場を弱くしている面もある。ここは意外と知られていません。

タダで貸したときの税金|贈与税は出にくいが、失うものがある

贈与税は、すぐに問題になるわけではない

国税庁の通達には、親子など特別な関係にある人の間で無利子の金銭の貸与などがあった場合、事実上の贈与にあたるとしても、課税上弊害がないと認められるときは贈与として扱わない、という趣旨の定めがあります(相続税法基本通達9-10)。家を無償で使わせるケースも、この考え方から「ただちに贈与税が問題になるわけではない」と説明されることが多いです。

また、親の借地を子が無償で使う場合について、国税庁は借地を使用する権利の価額をゼロとして扱うため子に贈与税は課されないとしています(No.4555 親の借地に子供が家を建てたとき)。

代わりに失うもの

問題はここからです。タダで貸すと、大家として使えるはずのカードを何枚か失います。

まず経費。家賃収入がないので不動産所得が発生せず、固定資産税や減価償却費を引く先がありません。実家を持ち続けるコストは、まるごと自腹になります。

次に相続税の評価。貸家建付地として評価額を下げられるのは、借家権の目的となっている家屋の敷地に限られます。国税庁は、一般に借地借家法の適用がないとされる社宅の敷地は、貸家建付地ではなく自用地として評価すると説明しています(No.4614 貸家建付地の評価)。無償で親族に使わせている家も、同じ理屈で評価減は期待しにくいことになります。

さらに小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)。ここでいう準事業は「相当の対価を得て継続的に行うもの」とされています(No.4124 小規模宅地等の特例)。タダ、あるいは著しく安い家賃では、この要件を満たさないおそれがあります。

⚠️ よくある誤解:「身内に住んでもらえば空き家じゃなくなるから相続税も安くなる」——これは成り立たない場合があります。節税目的で無償貸しを選ぶのは、むしろ逆に働くことがあると考えておいてください。

家賃をもらうなら、いくらにする?

出発点は、感情ではなく相場です。まず地域の相場を把握してから「そこからいくら下げるか」を考える順番にすると、あとで人にも説明ができます。

👉 実家を貸すときの家賃相場はどう調べる?適正家賃の決め方を大家が解説

ここで知っておきたいのが「固定資産税相当額」という水準です。国税庁の通達では、土地の借受者と所有者との間にその土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものは使用貸借にあたるとされています(昭和48年直資2-189)。つまり「固定資産税の分だけもらえば賃貸借になる」というわけではない、という点は押さえておきたいところです。

では家賃をいくらにすれば賃貸借として扱われるのか。これは金額だけでなく、契約の実態や継続性を含めて判断される部分で、「いくらまでならセーフ」とわたしが断言することはできません。ここは必ず税理士か税務署に確認してください。

そのうえで、大家として実務的に大事なのは2つ。契約書を作ることと、家賃は必ず口座振込にすることです。身内相手だと「今度会ったとき現金で」になりがちですが、記録の残らない支払いは、あとから賃貸借だったと説明する材料になりません。

見落としがち:同じ財布かどうかで扱いが変わる

ここは他ではあまり書かれていない論点です。国税庁は、生計を一にする配偶者やその他の親族に支払う地代家賃などは必要経費にならず、受け取った人も所得として考えないとしています(No.2210 必要経費の知識)。土地や建物に限らず、ほかの資産を借りた場合も同じ扱いです。

つまり、同じ財布で暮らしている親族の間で家賃を動かすことは、税務上あまり意味を持たない場合があります。同居している子から家賃をもらう話と、別世帯で暮らす弟に貸す話は、まったくの別問題ということです。自分のケースがどちらにあたるかは判断が微妙になることも多いので、専門家に確認してください。

税金より先に困るのは、たぶんこっちです

ここからは大家としての実感です。親族に貸すとき、実際にしんどいのは税金ではありません。

  • 契約書がない。身内だと省略しがちですが、契約書がないと修繕の負担も退去の条件も「言った・言わない」になります。家賃を安くするなら、なおさら紙にしてください。
  • 管理会社が入ってくれないことがある。親族間の賃貸は受けないという会社もあります。集金も苦情対応も自分でやる前提になります。
    👉 実家を貸すとき管理会社に頼むべき?手数料の相場とコスパを大家が本音で解説
  • 滞納されても督促できない。他人には言えることが、身内には言えません。何か月分もたまってから、ようやく切り出すことになりがちです。
    👉 家賃滞納トラブルの対処法
  • 修繕費でモメる。給湯器、エアコン、シロアリ。「安く貸してるんだから自分で直してよ」と思う側と、「大家の負担でしょ」と思う側で、確実に食い違います。負担の線引きは最初に決めてください。
  • 出ていってもらえない。賃貸借にすると、更新を断るには正当事由が必要になります(借地借家法28条)。将来売る可能性があるなら、期間を区切る契約も検討する価値があります。
    👉 普通借家契約と定期借家契約の選び方
  • 他の相続人への説明。兄弟の1人だけが安く住んでいる状態は、次の相続でほぼ確実に蒸し返されます。共有名義ならなおさらです。
    👉 共有名義の不動産を賃貸に出すときの注意点

この6つは、他人に貸していれば契約書や管理会社がある程度引き受けてくれる部分でもあります。親族に貸すというのは、その受け皿を自分で用意するということです。それでも貸すなら、契約書・家賃の受け渡し方法・修繕費の線引きの3つは必ず最初に決めてください。この3つを相手と落ち着いて話せるかどうかが、そもそも貸せる関係かどうかの判断材料にもなります。

【本音】わたしは基本的には身内に貸しません

そのうえで、わたし自身の結論もはっきり書いておきます。わたしは、基本的に身内には貸しません。

理由は、さきほど挙げた6つが、どれも最後は「言いにくさ」に行き着くからです。家賃を上げたい、修繕費はこちらでは持てない、そろそろ出てほしい。他人になら契約書と管理会社を通して言えることが、身内にはどうしても言えません。言えないまま我慢が積み上がって、最後に壊れるのは家ではなく関係のほうです。

だからわたしは、他人に貸してシンプルに経営します。契約書があり、管理会社と保証会社が間に入り、家賃は毎月口座に振り込まれる。感情が入る隙のない状態です。冷たい選択に見えるかもしれませんが、わたしは逆だと思っています。お金のやりとりを人間関係の外に出しておくからこそ、身内が本当に困ったときに、こちらから手を差し出す余裕が残るからです。

将来また家族で使う可能性を残したいなら、そこは契約形態でカバーできます。
👉 普通借家契約と定期借家契約の選び方

親族に貸す vs 第三者に貸す

親族に貸すメリットは、募集の費用がかからず、空室のリスクが小さく、家の使われ方も想像しやすいこと。デメリットは、家賃を下げる圧力がかかり、税務上のメリットを失いやすく、トラブルがそのまま人間関係に直結することです。

第三者に貸す場合の全体像はこちらにまとめています。
👉 実家を貸すメリット
👉 デメリットと注意点
👉 入居者の探し方

よくある疑問Q&A

Q. 親族から家賃をもらったら確定申告は必要?
A. 不動産所得が生じる場合は必要になります。基本的な考え方は 実家を貸したら税金はいくら?家賃収入20万円以下でも申告すべきか をご覧ください。ただし生計を一にする親族との間では扱いが異なる場合があります(前述)。

Q. 途中でタダから有償に変えられる?
A. 契約としては可能ですが、そのとき何がどう変わるのかは慎重に確認したい部分です。契約書と振込の記録を残す前提で、税理士に相談してから切り替えるのが安心です。

Q. 相場よりかなり安くしても、経費は落とせる?
A. 経費計上や評価減が認められるかは、対価の水準や継続性を含めた実態で判断されます。「安くしても賃貸借にしておけば全部使える」とは考えないほうが安全です。

Q. 建物だけ子に贈与して他人に賃貸し、土地は固定資産税相当額を親に払う形にすれば、相続のときに特例が使える?
A. こうした話を見かけることがありますが、国税庁の通達では、土地の借受者と所有者との間にその土地の公租公課に相当する金額以下の授受があるにすぎないものは使用貸借にあたるとされています(昭和48年直資2-189)。さらに同じ通達では、使用貸借に係る土地を相続で取得した場合、その上の建物が貸付けかどうかにかかわらず、土地は自用のものとして評価するとされています。また小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)は、被相続人、または被相続人と生計を一にしていた親族の貸付事業に使われていた宅地が対象です(No.4124)。生計が同じかどうかなどで結論が変わる、かなり専門的な論点になります。ネットの情報で判断せず、必ず税理士に相談してください。

Q. 赤字になったら給与と相殺できる?
A. 不動産所得の赤字は損益通算できるのが原則ですが、対象外となるものもあります(No.1391)。親族に安く貸して赤字を出す形は業務としての実態が問われやすい部分なので、必ず専門家に確認してください。

Q. 親族が家賃を払わなくなったら?
A. 契約書と振込の記録があるかどうかで、打てる手がまったく変わります。だから最初に「紙」と「口座」なんです。

まとめ

  • 分かれ道は「家賃をもらうかどうか」。タダなら使用貸借、もらうなら賃貸借
  • タダで貸すと贈与税は出にくいが、経費計上と相続税の評価減を失いやすい
  • 節税目的で無償貸しを選ぶと、かえって逆効果になることがある
  • 固定資産税相当額以下のやりとりは、通達上は使用貸借とされる
  • 家賃を下げるなら、まず相場を知り、契約書と口座振込で記録を残す
  • 同居か別世帯か(生計を一にするか)で税務上の扱いが変わる
  • 税金より先に効いてくるのは、契約書・修繕・退去・他の相続人への説明
  • わたし自身は基本的に貸さない派。それでも貸すなら、契約書・口座振込・修繕費の線引きの3つは必ず決める

身内に貸すのは、いちばん優しくて、いちばん説明が難しい選択です。だからわたしは貸さない側に立っていますが、これは正解ではなくわたしの結論です。決める前に一度、税理士に30分だけ相談する価値は十分にあると思います😊

出典民法593条・597条・598条借地借家法1条・28条(e-Gov法令検索)/国税庁タックスアンサー No.2210No.4124No.4555No.4614No.1391相続税法基本通達9-10使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて(昭和48年直資2-189)

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著者プロフィール
さゆ

戸建て専門の不動産賃貸経営者。築45年の祖父の家を賃貸に出したことをきっかけに、空き家活用に取り組む。

過去の自身のような「空き家で困っている人」の助けになるように情報発信中。同じ悩みを持つ方が一歩踏み出せるよう、体験談をもとにリアルな情報をお届けします。

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